張り詰めた緊張の糸が、ドアの閉まる音で途端に切れた。
服を脱ぐのももどかしげに、ピアーズは上司の肌をまさぐる。
鈍く傷のうずく頭で、クリスは冷静さを取り戻そうとしたが、
今しがた命の危険に晒されたばかりの己の体もまた、歳若い部下と同じように
雄の本能で猛っていた。
うわずった声で、ピアーズがクリスの名を呼んでいる。
自分の上司が、自分の無体を許し、受け入れることをピアーズは知っていて、甘えている。
クリスの柔い処を弄り、吸い、舐める。同じ男の(それも自分よりも屈強な)その部分の感触に、
声に、ためらいがちに求める体に、若い男は溺れていた。
性急に体をつなげようとする直情のままの振る舞いを、クリスはあきれているだろうか?
部下の性欲処理に付き合ってやっていると?
これは色恋ではないと。
わずかなとまどいと諦めたような目、少し慣れた仕草、悲しいため息。
すべて部下が気づいてないと思っている。これはただの衝動であると。
クリスこそ気づいていない。部下が己を求める声に。
必死にその奥底に触れようとする心に。
本当に?
隊長、たいちょう… クリス。
呼ぶ声を遮るように、クリスはピアーズの唇に噛み付いた。
お互いの気持ちのゆく先を、ずっと気づかないフリをしている。