レオクリ11


クリスを困らせるのが好きだ。
痛い?って聞いたら、小さな声で平気だからと
ぶっきらぼうな答えが返ってくる。
痛くないのは知ってる。クリスが嫌がるぐらい
丁寧に準備をしたし、もう、受け入れることに慣れて
ちゃんと感じられていることも、知ってる。
気持ち良くなってるのを恥ずかしくて知られたくないと
我慢するクリスがかわいいと思う。
時間の合間を縫ったほんの数時間の逢瀬のあと、
何週間も何ヶ月も会えなくなることなんて稀ではない。
現場に身を置いている最中には、相手のことがまるっきり
頭から消えているときもある。クリスだってそうだろう。
そんな事実はレオンの気持ちを時に暴れさせた。
ただ、いつも困った顔をしながらも自分を受け入れてくれる
クリスからのキスや、シャワーを使っているときに湯が沁みて
背中に爪跡があることに気づく時、そんなことをひとつずつ、
丁寧になぞっていくと、このほんの数時間をとても優しい、
大切な時間に変えることができた。
恋人、とは言えない。クリスも、言わない。
確認して否定されるのが嫌だという女みたいな気持ちもある。
この関係に明るい未来がないことは2人とも知っていた。
言葉は少なく、次の約束なぞしない。
隙間無く互いの肌を合わせている時の泣きそうな気持ちだけが
すべてだった。